30 :伝者:2014/12/19(金) 11:14:23.63 ID:Q9WITJsub
A「お待たせー(^^)/」
俺「両親は大丈夫か?」
A「浄縁神楽の練習をしてくるって言って、抜け出してきた」
俺「そっか、Bが待ち合わせ場所にいなかったんだよ」
A「そうなの!?、予定通りにいくのかな」
数十分してBが到着した。

俺「どこいってたんだよ!」
B「ごめん!、開けておいた有刺鉄線の確認に行ってた。
直されていたら元も子もないからな。直されていなかったから、一先ずはいけそうだ」
A「そうなんだ、そろそろいこっか!」
俺「ああ、数分で着くし、準備確認しながら行こう」
B「了解」





31 :伝者:2014/12/19(金) 11:16:17.25 ID:Q9WITJsub
Bが開けた穴の入り口までは、なるべく人通りが少ない所を通って向かった。
俺「やっぱり、神主一族の人達が見回っているな」
はっきりとは見えなかったが、多くの人影が巡回しているように見えた。

B「隙を見て行こう」
A「先頭はBが行ってね、私と俺君は場所を知らないんだから」
B「分かった」

人影が穴の傍を離れた隙に、俺達は移動した。
俺は我先にと穴を潜ろうとした。

俺「おいB!、穴通りにくいぞ!」
B「潜れば行けるって」
俺は服の背中を有刺鉄線に引っ掻けながらも、穴を抜けた。
BとAも難無く穴を抜け、森の中に入った。



32 :伝者:2014/12/19(金) 11:17:59.83 ID:Q9WITJsub
俺「ここからどうするんだ?」
B「この森を北東に抜ければ、獣道へ出る筈だから、一先ずはそこに向かう」
A「森の中、何か不気味」
俺「ああ」

俺達は懐中電灯を灯し、獣道へ向かって歩き出した。
山の中の村に住んでいるとは言え、
多くの獣が徘徊する森、俺達は獣が動き出す夜の森に入った事が無かった。
山犬の遠吠えが響き渡り、足元には蛇や虫がたくさん。
俺とBは平気だが、Aがずっと俺の袖を掴んでいることから、
やっぱり女子なんだなと思う所もあった。

歩き始めてから、軽く三十分は経ったと思う。
獣道にはまだ出ない。



33 :伝者:2014/12/19(金) 11:19:12.20 ID:Q9WITJsub
俺「おいB、まだ道に出ないのかよ?方向間違えて無いか?」
B「方位磁針を使っているから、そうはならないと思うが」
俺「少し見せてみ」
B「ほら」
俺「確かに、方向はあっているな」
A「大丈夫なの?」
俺「ここまで入ってきた以上、今から帰るとしても森の中で迷うだけだから、
獣道へ出るまで歩くしかない」
A「そっか」
B「行くぞ」
俺達は歩きだした。



34 :伝者:2014/12/19(金) 11:20:49.46 ID:Q9WITJsub
と、歩き出して五分程経った時の事だった。
獣道へ出たのだ。

俺「この獣道であってたか?」
B「多分そうだと思う、時間的に」
A「どうする?」
俺「確認する為に、この先にある筈の障芽池まで行くっていうのは?」
B「だな」
A「障芽池にあまり近づかないようにね」
俺とBは、そもそも障芽池を見た事すら無く、A自身も小さい頃に一度両親と行ったきりだそうだ。
なので、障芽池に続く道かも分からなかったから、祠に行く前に確かめる必要があった。



35 :伝者:2014/12/19(金) 11:23:01.88 ID:Q9WITJsub
数分程度歩いた時の事
B「獣の声とかしなくなったな」
俺「確かに、山犬の遠吠えとかも聞こえなくなった」
俺「どうしたA?」
Aの元気が無かった。

A「実は、この獣道へ出た時から何か寒気がしてて」
俺「寒気、大丈夫か?」
B「上着とか、貸すぜ」
Aはワンピース姿なので、夜の夏で寒いのも無理はないと思った。

A「何かね、肌に直接くるような寒気じゃなくて、心に直接来るような寒気なのよ」
俺達はAの状態が、良くない事に気が付いていた。



36 :伝者:2014/12/19(金) 11:24:29.44 ID:Q9WITJsub
Aは精神的に疲れている時とかに、「何かね」と会話を始めるからだ。

俺「引き返すか?」
B「だが、障芽池を確認しない事には道に迷うだけだぜ」
俺「それもそうか、行けそうかA?」
A「少しなら大丈夫、行こ?」
俺「分かった、何かあったら遠慮なく言いなよ」
B「少し歩く速度を速めるか?」
俺「どうするA?」
A「今のままで良いよ」
俺「分かった」

この時、俺は本能的に良くない感覚を捉えて始めていた。
これが第六感というのかどうかは分からないが。



37 :伝者:2014/12/19(金) 11:26:51.45 ID:Q9WITJsub
暫く歩いた時、
B「お?」
俺「どうした?」
A「・・・・・・」
Bが何か気付いたようだ。
B「この先に小屋があるぜ、あそこで少し休んでいかないか?」
俺「小屋?」

確かに獣道の先には小屋があった。
A「そこで休も?」
俺「ああ」
Aの身が万全で無い以上、そこで休む事にした。
俺は何故か、そこに小屋がある事に違和感を感じなかった。



38 :伝者:2014/12/19(金) 11:28:52.77 ID:Q9WITJsub
俺「随分と古い小屋だな」
小屋は草や木で覆われ、空を見上げても一面を覆われており、月明かりが差し込んでいなかった。
B「中に入ろうぜ、Aも俺達も休憩しよう」
俺「ああ」
Bは一人で小屋の出入り口に向かって行き、扉を開けた。
小屋の扉は鍵がかかっていなかった。
A「・・・・・・・・・・」
Aはずっと黙ってしまっている。

中に入ると、Bはそそくさと椅子を探しだし、そこにAを座らせた。
小屋の中は、椅子や机、包丁のような物等、色々な物が転がっており、何かの異臭も感じられた。



39 :伝者:2014/12/19(金) 11:32:34.98 ID:Q9WITJsub
Aは椅子に座り、Bは小屋の周囲を物色している。
俺は小屋の中を調べる事にした。
物が散乱している場所から、角を曲がり奥へ行った所に扉があった。
俺「なんだこの扉」
俺は扉を開けようとした。

その時、中から
「・・・・ポーン・・・・・・・・ポーン」
と言うような物音が聞こえてきた。



40 :伝者:2014/12/19(金) 11:35:09.54 ID:Q9WITJsub
俺は一瞬だけ手を止めたが、好奇心が勝り扉を開けてしまった。
扉の中は和式便所で、変な異臭はここから出ている事が分かった。
和式便所の窓は割れており、外の森が見える。
なんだと思い、便所を出ようとした時、


41 :伝者:2014/12/19(金) 11:36:11.00 ID:Q9WITJsub
「ああ・・・・ああああああ・・・ああああああ」と言った声が後ろから聞こえた。
俺「!?」
その声は捻り出した様な声で、声だけでこちらを見ている気配がした。

俺「・・・・・・・・」
俺は立ち止まってしまった。
後ろを振り向こうにも、恐怖心が勝り、硬直してしまった。
「あああ・・・・あああああああああ・・・・」
声が聞こえてくる、ゆっくり近づいてくる感じがした。

その時、



42 :伝者:2014/12/19(金) 11:37:58.67 ID:Q9WITJsub
B「おい!、何やってる!」
と、Bが小屋に戻ってきた。
同時に後ろの声は消えた。
その瞬間に俺はBに引かれ、Bは思いっ切り扉を閉めた。

俺「・・・・・・・・・・・・」
B「おい!、大丈夫か!」
俺「ああ、Bか」
B「ったく、Aもお前も大丈夫かよ!
Aは奥の椅子で寝ちまってるし、お前は扉の前で失禁しながら立ち尽くしちまってるし!」
俺は失禁していた。
恐怖の余り、自分でも気付いていなかったのだ。

俺は今体験したことをBに話した。
B「それが何かは分からないが、とにかくこの小屋から出る方がよさそうだな」
俺「だな」
B「Aも連れて出るか」
俺達は物が散乱している部屋に戻った。



43 :伝者:2014/12/19(金) 11:39:13.52 ID:Q9WITJsub
俺「おい、Aは?」
B「あ?、あれ、そこの椅子にいた筈なのに」
いつの間にかAが椅子からいなくなっていた。
と、部屋の角の所から足音がした。

俺「おいA!」
部屋の角の所に行くと、壁と同化した扉があった。
B「なんだその扉」
扉を開けると、階段があった。
二階へと続く階段だ。

俺は正直、この小屋に二階があった事に気付いていなかった。
外から見ても二階と思われる所は全て、木や草で覆われていたからだ。



44 :伝者:2014/12/19(金) 11:40:13.36 ID:Q9WITJsub
俺「二階にAは行ったのか?」
B「そうだろ、小屋の入り口の扉も閉まってるし」
俺とBは二階の階段をゆっくりと歩いた。
速く歩けば抜け落ちそうな程、階段の木は腐っており、朽ちている。
そして二階の部屋の扉を開けようとした時、

B「おい俺!、待て」
俺「何だ?」
B「扉を良く見ろ」



45 :伝者:2014/12/19(金) 11:41:07.89 ID:Q9WITJsub
扉は数百枚と言える数のお札で閉じられており、扉の両端には盛り塩があった。
だが、その盛り塩は黒く、変色していた。

B「扉の雰囲気からして、ここはやばいと思う。
だが、その扉と壁の所のお札が破られているから、Aはこの中にいる」
俺「行くしかないだろ」
B「俺が開ける」
Bはそう言うと、思いっ切り扉を蹴飛ばした。
その瞬間、Bは何かの強い力で吹き飛ばされ、階段の一番下へ落ちた。



46 :伝者:2014/12/19(金) 11:42:18.56 ID:Q9WITJsub
俺「おいB!」
B「俺!!!、部屋の中を見ろ!!!!」
俺は部屋の中を見た。
中にはAが立っていたが、様子がおかしい。
こちらの方を見て、Aは両手を真横に上げている。

俺「A!!!!」
と言い、駆け寄ろうとした瞬間、
人の形をした黒い影の様な「何か」がAの後ろから現れ、赤く濁った眼で俺を睨み、追いかけてきたのだ。



47 :伝者:2014/12/19(金) 11:43:37.92 ID:Q9WITJsub
俺「!?」
俺は咄嗟に扉を閉め、黒く濁った塩を掴み、階段を駆け下りた。
下に落ちたBは、落ちていた包丁を手にし、身構えていた。

俺「B!!逃げろ」
B「Aがいるんだぞ!!」
俺「!!」
その時、和式便所のある方向からも黒い何かが近づいてきた。
B「クソッ!!!」
Bは包丁を持ったまま、俺と小屋を出た。



48 :伝者:2014/12/19(金) 11:45:30.67 ID:Q9WITJsub
Bは包丁を持ったまま、俺と小屋を出た。
小屋を出た瞬間、
A「きゃあああああああああああああああああああああああああああ」
Aの悲鳴が小屋から響いた。

俺「A!?」
B「クソオオオオオオオオオオ」
Bが小屋に戻ろうとするが、黒い何かが追ってくる。
「あああああ・・・・あああああああああああああ」

呻き声を上げながら迫ってくる黒い何かに、
Bは持っていた包丁を投げ、俺は掴んでいた塩の塊を投げた。
「あああああああああああああああああああ」

黒い何かの動きが止まった隙に、俺とBは逃げた。
獣道を無我夢中で走って、途中で何度も転んだ。
正直、この辺りの記憶は曖昧で、良く覚えていない。



49 :伝者:2014/12/19(金) 11:47:13.59 ID:Q9WITJsub
数分程全力で走り続け、俺が転んだ時、
「ああああああああああ」
耳元で声がした。

それから俺達は無我夢中で走り続け、
障芽池の森の周囲に張られた有刺鉄線の前に出た。
俺とBは無我夢中で外の大人達に助けを求め、自作の笛を吹いた。
それに気づいた神主一族の大人達に助けられた。



50 :以下、VIPがお送りします:2014/12/19(金) 11:48:03.23 ID:HTRUwnM8A
こええ



51 :伝者:2014/12/19(金) 11:49:32.45 ID:Q9WITJsub
俺とBが障芽池の森から出てきた事を知り、
それは直ぐに村中に知れ渡り、
俺とBの両親に家族、神主一族の他にも多くの村人が障芽池の森の入り口付近に集まった。

何も言わずとも、
俺とBの服がボロボロである事から大体の検討が付いたらしく、
直ぐに神社の本殿へ連れてかれた。
既に本殿には村人全員が召集されており、異様な雰囲気だったのを覚えている。

 

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