祖母は仏壇に向かい、一心不乱に祈っております。
祖父はY介の隣に座し、遮二無二Y介の事を励まし続けています。
和上様がほっとけさんを呼びに行かれて
暫しの間は、祖父母はひたすらにY介の身を案じておりましたが、
私は抜け殻のように
Y介の傍に立ち尽くすのみで、涙を流すのみでした。

幾分かそのまま時が経ち、祖父がにわかに語り始めました。
祖父「御屋敷の事、なんも言っちょらんで悪かったの・・・」
私もY介も返事は出来ませんでした。
しかし、祖父は語り続けました。
祖父「じーちゃんらが子供ん頃までは、何処の家でもちゃーんと教えておったんや・・・
ただの、ちょっとした事件があってからは、
下手に教えるからいかんのじゃと言う話になっての・・・」
事件?
多少気にはなりましたが何も聞く事は出来ず、そのまま祖父の話に聞き入っておりました。
祖父「大人連中があの御屋敷に行くときも、決められた日だけ、
離れにしか入る事が出来ないようになっておるんや・・・
それだけ近寄る事が恐れ多い場所なんや・・・」
そこまで祖父が話したところで、庭から玉砂利の音が響き、複数名分の足音がしてまいりました。

先ずは和上様が一礼をして仏間に入って来られて、仰いました。
和上「ほっとけさんが御越しになられました」
その和上様の後ろに、異彩を放つ一団がいるのが眼に入りました。
純白の衣装に身を包み、顔を白塗りにして
麻呂のように紅を塗っていました。
和上様の後ろに見えた三人が皆同様の身形と御作りをしていたのが、
なおさら不気味に感じたのを覚えております。
和上様が一歩下がり、その三名が前に出て左右に分かれました。
その後ろから、
黒い装束に身を包んだ矮躯な男性が現れました。

・・・私は思わず息を飲みました。
その男性は、明らかにあの御屋敷で遭遇した男性だったのです。
彼が“ほっとけさん”と呼ばれる人だったとは夢にも思いませんでした。

陽の下で見るその男性は40前後と思われ、
髪を後ろで束ねており、精悍とも思わせる顔つきをしておりました。
しかしその眼光は鋭く、
畏敬の念すら感じさせられる程です。
残る三名は従者のような者でしょうか、その中の一人から声が上がりました。
従者「此方がほっとけさんです」
その声を引き金に祖父母が叫びます。

祖母「この子を助けてやって下さいまし!お願いします!お願いします・・・」
号泣しながら懇願していました。
祖父「わしに出来ることならなんでもいたします・・ですから何とかしてやってくれんでしょうか・・・」
畳に額を擦り哀願するその祖父の姿で、
私は自分の愚かさを嘆きました。
横を見ると、
Y介もそのありさまを見て眼を細めている様子です。

ほっとけさん「この子は死ぬな」

予想外な言葉に、その場の全員が凍り付きました。

祖父が重い空気を破り発言しました。
祖父「この子の犯した罪は、家長であるワシの責任です・・・
代わりにワシが死んでもかまわんのです!何とかこの子の命だけは助けてやって下され・・・」
祖父の哀願むなしく、ほっとけさんは冷淡に語ります。

ほっとけさん「無理だ」
祖母「そんな・・・あんまりです・・・」
ほっとけさん「誰かが代わりに死ねば助かると言う問題の話ではないのだ」
私は恥ずかしながら、
この時すでに涙は枯れ、思考が停止して、第三者のような目線になっておりました。
ほっとけさんはおもむろにこちらに歩み寄り、その冷眼でY介を見据えた。

ほっとけさん「すでに呪(しゅ)に染まっておるな。愚かな事をしたな」
Y介は何も言わずに突っ伏しています。

ほっとけさん「お前たちが悪戯したモノは荒神を封じてあったものだ。
荒神は長い時を経て、我が一族のかけた封印によって既にあの剣にはおらんがな」
当時の私達には、
言葉半分ほどしか理解できていなかったと思います。
それを聞いて疑問を挺したのは祖父でした。

祖父「悪い神さんがおらんのじゃったら、なぜこの子は苦しんでおるんです!?」
ほっとけさん「それは我々の一族が用いているのが呪術だからだ。
呪によって荒神を縛り、長い年月をかけ荒神を善神にして、
土地の守り神に据えると言う方法をとっているからだ」

後に詳しく知る事になるのですが、
ほっとけさんの一族は所謂、呪い師のようなものだと言う事です。
そしてそのまま説明を続けました。

ほっとけさん「長年かけて荒神を縛った呪は、荒神の負の力により更に強力な呪となるのだ。
そしてその呪は荒神がいなくなった後も長い時間をかけて解いて行く。
今のあの祠は呪自体を封じていたものだ」
もう誰も何も言う事は出来ませんでした。
静かな空間で、祖母のすすり泣く声と、
呟くように「お願いします・・・」と繰り返す言葉だけが虚しく響きます。

ほっとけさん「坊主、お前は死ねるか?」
ほっとけさんはY介に、無情とも言える問いかけをしました。
Y介はその言葉の意図も意味も理解できぬ様子で、呆然とほっとけさんを見上げておりました。
ほっとけさん「お前に纏わりつく呪は印のようなモノなのだ。
その印をめがけて少しずつ呪が注がれ続けている。
長年かけて強大になった呪は、お前を殺したとしても治まる事は無い」
Y介は蚊の泣くような声で一言を発しました。

Y介「・・・どういう・・事ですか?」
ほっとけさん「お前を殺した後も呪は近い者を喰らい続けるだろう。
この場にいるお前の身内や、離れてはいても
お前の家族や血の繋がっている者は、ほとんどが死ぬだろう。
しかしお前が死んでもいいと言うなら、他の者達だけでも助ける事はできる」
ほっとけさんはまだ幼いY介に、
犠牲になるか否かの決断を迫りました。
とても残酷で、誰しもが言葉を失っておりました。
Y介「・・・はい・・・お願いします・・・みんなを・・助けて・・・」
恐らく喋る事すらつらいと思われるほど
衰弱しきったY介が、力を込めて言いました。

私「いやや・・!!なんでY介が死ななアカンの!!・・死んだらアカンよいややいややあああ・・・」
私は堰を切ったように涙が溢れ、顔をぐちゃぐちゃにして叫びました。
祖父母は何も言いませんでしたが、噎び泣いていた事と思います。
しかし、そんな私にY介は一言だけ放ちました。
Y介「言っただろ・・・守るって・・・」
泣きじゃくり「いや」を繰り返すだけの私に比べて、Y介はとても大人に見えました。
Y介「オレは・・・・・・隊長だから・・・な」
そう言って私に笑顔をくれたのです。
ほっとけさん「立派な覚悟だ。準備をしよう」
ほっとけさんの一言で従者が動き出しました。
心なしか、ほっとけさんの顔から険が取れ、優しげに見えました。

外からいくつかの大きなつづらが運び込まれ、儀式の為の準備が始まりました。
仏間全体が純白の垂れ幕で覆われて、
部屋の中央部には150cm四方くらいの黒く光沢のある織物が置かれました。
その織物を囲むように短い白木の杭が畳に打ち込まれて、
そこに朱色の水糸が張られていきます。
縁側に荒縄が幾重にも巡らされ、
そこに模様が描かれた鳴子のような物が吊るされていました。
(他にも色々あったと思いますが、私が確かに覚えているのはこれだけです)
従者の一人が藤色の長い包みを持ち、後の二人は杯と木の枝を持っていました。

そして、黒い布の上に私とY介が座らされたのです。
ほっとけさん「これから執り行う事を説明する。
お前たち二人は決してそこから出てはいけない。絶対にだ」
私・Y介「・・・はい」
ほっとけさん「これから少しの間この部屋にいれば、注ぎ込まれている呪が断たれる。
すると今まで少しずつ注がれていた呪が纏めて全てやってくる。
それをお前の中に全て取り込むのだ」
Y介の表情からは悲壮感は感じませんでしたが、その恐怖を余りあるものだったでしょう。
しかしY介は何も言いませんでした。
ほっとけさん「もう一人も少なからず呪が付着しておるので、
この場でその呪もこちらに移すから、何があってもこの糸の外に出ないようにしろ」
祖父母はすでに部屋から出されていたのが幸いでした。
恐らくはこの説明を聞いて正気を保てはしなかったでしょうから。

儀式が始まると、歌とも呪文ともつかぬものを、
左右にいる従者と正面にいるほっとけさんが口ずさみ始めました。
左右の従者は手に持った枝で
杯の中にある液体を私達に振りかけながら、周囲をゆっくりと周り出しました。
稀にほっとけさんが、
枡に入った色のついた生米をぶつけてきます。

儀式が始まりどれくらい時間がたったのでしょうか、物凄く長くも感じ、
ほんの数分のような気もしました。
Y介を見ると、顔色がかなり良くなっているのが伺えました。
同時に、少しずつですが、眼に涙が浮かんでいるのが見て取れました。
遠くで山鳴りが鳴っている。
・・・違う!これは山鳴りじゃない!

庭先で何かが蠢いている。
得たいの知れぬ何かの息遣いだ。
見えないけれど、眼前にいるかのように感じる。
その何かは少しずつだが確実に、一歩一歩歩くようにこの部屋に近づいてきています。

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!!

縁側のガラス戸が激しく揺れて音を立てている!
ほっとけさん「来たぞ!」
ほっとけさんの声に呼応するかのように、縁側の垂れ幕が左右の従者によって引かれました。

カランカランカランカラン

荒縄の鳴子が狂おしく鳴り響きます。
Y介「ひっ!」
思わず声が漏れてしまったようです。
私もY介も歯の根が合わず、カチカチと歯のぶつかり合う音がします。
ソレが後ろから近づいてきているのが分かります。
距離が縮まるごとに背中の方から強い圧力がかかり、徐々に空気が重しの如く圧し掛かってきます。
とうとう私とY介の真後ろまでやってきた!

私・Y介「あああああああああああああああああああああああああああああ」
私とY介は叫びました。
かろうじてその場から逃げだす事は踏みとどまりましたが、Y介の方を見て驚愕致しました。

昨晩見た白い手が無数にY介を捉えています!
私は完全に凍りついていました。
後ろからは低くくぐもった怨嗟のような声が聞こえています。
Y介は今までに聞いた事のないような奇声を発し、悶え苦しんでいます!
私はろくに言葉になっていなかったと思いますが、
必死でY介の名前を呼んでいました。
Y介の全身がドス黒く染まり、
目や口からは大量の汁が垂れ流されています。
刹那に天上まではあろうかと言う大きな闇がY介を包み込み、Y介の全身にその闇は収縮し収まりました。
それを見計らっていたかのように
ほっとけさんが動きました!

左の袖を捲り上げて、
左手でY介の顔を鷲掴みにして、
呪文のようなものを唱え続けました。
するとY介の耳、眼、鼻、口から、黒いもやが溢れ出て来たのです!
黒いもやは細く糸状になり、
ほっとけさんの指先から入り込んで行きました。
すると今度は、ほっとけさんの指先からどんどん黒く染まり始めました。
ほっとけさんの顔が険しくなり、脂汗をかいている様子です。
ほっとけさんを見ると、
手首から肘の手前辺りまで、三本の黒白の斑模様の紐が結ばれています。
黒い浸食が手首の紐の辺りまで伸びて来ると、プツ、プツと紐がほつれて弾け飛びました。
更に浸食は進みます。次は二本目の紐のところまで浸食されて来ました。
プツ、プツ・・・

ほっとけさん「今だ!!!」
ほっとけさんの叫びが木霊しました!
それまで藤色の包みを携えて
ほっとけさんの後ろで佇んでいた従者が動き、包みの布を投げ捨てました!!
従者「阿っ!!!」

ズダンッ!!!!!ボトッ・・・

白刃が解れかけた紐をめがけ振り下ろされ、その刃は下の畳に食い込んでいます。
どす黒く変色したほっとけさんの腕は切り落とされ、
Y介の膝元に転がり落ちました。
石榴のような色をした血潮が飛び散り従者Y介が紅に染まりました。
刃を振るった従者は
すぐに懐から筆を取り出し、
ほっとけさんの腕から滴る血で、切り落とされた手に文様のようなものを描きました。
更に和紙を上に載せ、
その上から刃を包んでいた布で包むように拾い上げました。
包んでいる最中にガサガサと和紙が立てる音を聞いて、
まるで切り落とされた手が動いてるのではないか、
という恐怖に駆られたのを記憶しています。
残った二人の従者が駆け寄り、
それぞれ取り出した黒と白の紐でソレを縛り、桐の箱に納めました。

ほっとけさんは止血をしながらこちらを見て険しい顔でしたが、
今までとは別人のような温もりに満ちた声で労ってくれました。
ほっとけさん「よく頑張ったな・・・二人とも・・」

ほっとけさんの優しい言葉に、
それまでの緊張と恐怖は一瞬にして拭い去られました。
しかし恐怖の余韻からか
体が強張り、感謝の言葉すら返す事が出来ないでいる私を後にして、
ほっとけさんはその場を去って行きました。
滴り落ちる血痕は、まるでほっとけさんの足跡のようにも見えました。
ほっとけさんに続き、
左右の従者も切断された手を納められた箱や諸々の道具を持ち、その場を後にしました。
一人だけ残った従者が私の前に立ち、
これから後の処理があるのでもう少し頑張るようにと言われたのです。
その時、僅かにですが、従者の方の口角が緩んだ気がしました。

従者「あなたもですよ、動けますか?」
私はその言葉を聞くまで、恥ずべき事に
隣で横たわる最も大事な存在に気を配る事が出来ないでいました。
心の奥底から希望と興奮が込み上げ、泣きじゃくりながら声をかけました。
私「Y介え・・・Y介えええ!!」
Y介に手を添えて激しく揺さぶります。
Y介「・・・なんだよ・・また漏らしたのか?・・R」
私「アホか・・!Y介はアホや・・!!・・・・・・ありがとう・・・」
Y介は少し上体を起こして笑いました。

そして祖父母が、和上様に付き添われ仏間に入ってまいりました。
祖父母の顔は数時間の間に憔悴し切った様子で、
私はそれを見てとてつもない罪悪感にかられて涙が溢れました。
Y介もそっと顔を逸らしたのが見て取れました。
祖父は私達を一喝し、
すぐさま従者の方に向き直り詰め寄ったのです。

祖父「Y介は・・この子らはもう大丈夫なんやろうか!?助かったんでしょうか・・・!?」
従者「恐らくはもう命の危険は無いと思われます」
祖母「有難う御座います・・・ありがとうございます・・・」
今にも泣き出しそうな声で祖母が言いました。
そして、少しの間をおいて従者の方が懇々と語り出しました。
従者「今回のこの子たちは、ある意味で運が良かったと言えるでしょう。
この子たちが“うつった”呪が他のものでしたら、
この子の死でしか全てを終わらす方法はありませんでしたから・・」
背筋に冷たいものが走りました。
祖父母も動揺の色が顕著に表れております。
それを見て従者の方は祖父母に向かって言いました。

従者「御二方は過去の忌まわしい事件は知っておられますね?」
祖父「はい・・・、あのような事が、まさかワシの孫の身に降りかかるとは・・・」
従者「いい機会ですから、その事も含めて君たちにお話ししましょう。
そして出来る事なら反省して、
君たち以外に同じ過ちを犯す事が無いよう、君たちの世代からも戒めて行くと良いでしょう・・・」
私とY介は黙って頷きました。

昔々、この地で3体の荒神が暴れておりました。
この3体の荒神は非常に強力な力を持ち、
幾人もの高僧が封じようと試みましたが返り討ちにあったそうです。
そこに噂を聞き付けてやって来た
一人の呪い師が、特殊な方法で封じたそうです。
呪いを用いて荒神を封じた彼を、『封渡家さん』と呼ぶようになったそうです。
それがほっとけさんの御先祖様に当たる方だそうです。
(他にも、仏さんの使いと言う意味から発生した言葉だという説もあるそうです)

三体の荒神は呪で縛りつけられ、別々の場所に封じられました。
しかし荒神の力はとても強力で、
そのまま滅する事も敵わず、その力を逆にこの地の為に使えるように、
何代にも渡り呪を結び続けてやがて浄化する、という形をとる事になりました。
その為にほっとけさんはこの地に居を構え、
あがめられる存在となりました。
何代にも渡り呪を結び続け、三体の荒神全てが浄化され
土地神となった後には、荒神の邪気を吸い、
幾重にも結ばれ続け強大になった呪が残りました。
その次の代のほっとけさんからは、この呪を“ほどく”作業が始まり、
また何代にもわたって少しずつ解かれて行くのです。
この呪を解く方法は、ほっとけさんが少しだけ呪を取り込み、
結界で囲われた御屋敷にて少しずつ浄化していく、と言う方法だそうです。

御屋敷の母屋とほっとけさんは
普段からその呪に侵された状態で、
一度取り込んだ呪が浄化され、次の呪を取り込むまでの間だけ、
外部からの御進物等を持ってきた人と会う事が出来るそうです。
(ただし、直接会うのは従者の方だけだそうです)
そんな事情から、村では古くから、
ほっとけさんの屋敷にみだりに近づいてはならぬとの言い付けが語られておりました。

このような話を聞かされて私は、
子供ながら大きな疑問を抱き、それをそのまま口に出してしまったのです。
私「でも・・そんなの一回も聞いたことないで?」
その質問への答えは、
祖父の方から返って来ました。
祖父「それはの・・じーちゃんが子供の頃の事件のせいなんじゃ・・」

その事件とは、祖父が少年の頃に
疎開してきた子供達の数名が、
御屋敷の話を聞き付け、同じような事をしでかしたのです。
後になって、子供たちは空腹で、
御屋敷には食料が沢山隠してあると思いこみ、侵入したのだと分かったらしいです。
が、子供の好奇心による所も大きいだろうとの事で、
知らねば誰も行くまいと
大人たちの間で結論が出て、祖父の世代以降は、
村でほっとけさんについては語られぬようになったとのことです。
その時の数名の子供はみな命を落とし、
その親族も戦争によるものか判りかねますが、全員がお亡くなりになったとの事でした。

通常であれば呪を封じた祠には辿りつけぬようになっているのですが、
御屋敷で呪に感染してしまった事で私とY介は呪に呼ばれ、
その感染した呪の源まで導かれてしまい、このような惨事に見舞われてしまったのです。
ただ、不幸中の幸いであったのは、その時の呪が
すでにかなり解かれていたので、
なんとか私達の命は救う事が出来たとの事でした。
ただし、Y介に本当に命を懸けるだけの覚悟が無ければ、
恐らくは助けることはできなかっただろうと言われた時は、本当に鳥肌が立ちました。

こうして全ての真相を明かされ、
その後の処理を終えて従者の方は御屋敷に帰って行かれました。
(後処理は、仏間の畳を燃やしたり、私とY介の体を清めたりといった事をしました)

全てが終わり、遙か遠くからオレンジ色の光に照らされ
黒と橙のコントラスとに染まる居室で、私とY介は呆けていました・・・
ひぐらしが物悲しく夕暮れを告げている。
Y介「・・・R」
私「なに?」
Y介「探検隊は解散だな・・・」
私「・・・そうやな」
私と私の親友がほんの少しだけ大人に一歩近づいた、そんな気がしました。

それからY介は両親の元に帰る事になり、現在でも元気にやっています。
ただ、あの時の後遺症か視力がかなり落ち、
代わりに見えなかったものが年齢とともに見えるようになったと聞きます。
ほっとけさんは間もなくして引退され、次の代に家督を譲られたそうです。
あの時に手を切り落とした方が
現在のほっとけさんだそうですが、もう次の代まで持ち越すことは無いだろうと聞きました。
私は引退された後に
あの時のほっとけさんに一度だけ会う事ができ、呪について色々な話を聞く事が出来ました。
そのせいか、この年になり今もまた
“探検病”が再発している最中でございます。


長々とお付き合い頂いた皆様、ありがとうございました。
私の幼い頃の体験談はこれで全てですが、
皆様もくれぐれも過ぎた好奇心には御気をつけますよう・・・


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