海にまつわる怖い話・不思議な話 4

27 :本当にあった怖い名無し :04/08/10 21:46 ID:/FQrYvgc
295 :名前:('A`) :04/07/07 18:20
俺が大学1年の時の話。
何もない田舎の大学に通う俺と大学の友人は、夜釣りに行くことを趣味にいていた。
大学は、大きな漁港を持つ日本海側の地方都市に立地し、
釣りの場所には困らなかった。

その晩はメバルを釣ろうと思い、友人kと漁港に出かけた。
そして、漁港の入り口付近のテトラポットの間を狙って釣りをしていた。

夜の漁港はとても静かだ。
朝が早い漁師は、暗くなる前に漁港から姿を消してしまう。
波がテトラポットにぶつかって砕ける音だけが、規則的に聞こえてくる。

釣りに集中し、ルアーの動きを追っていた俺は、隣から突然誰かにのぞきこまれ、かなり驚いた。
小柄で痩せた老人が、俺の横にいきなり現れたのだ。
いや、もしかしたら、しばらく前からいたのかもしれない。
俺が気付かなかっただけか?
それにしても、この老人の態度は少し無礼だ。

俺がそう思ってぶぜんとしたが、老人は終始笑顔のままだ。
漁港に設置された街灯の明かりが深い影をつくり出しながら、老人の顔を照らす。
沈黙の緊張に耐えかねた俺は、「散歩ですか?」と尋ねた。
老人は答えない。
しかし笑顔のままだ。

俺は少し不気味になってきた。
もしかしてこのジーさん、いかれてんじゃねーか?痴呆か?ならほっとこ。
今度は老人を無視して、足元にルアーを落とし込んで釣りを続けた。

しばらくすると、老人はどこかへ行ったようだった。




296 :名前:295 :04/07/07 18:22
1時間後、別の場所でスズキを釣っていたkと合流した。
kにこの話をすると、
「そういうのって、海の昔話だと、話したらだめなんだよな。
言葉をつかまえられて、魂とられて、海の底に引きずり込まれるってやつだよ。
俺の田舎だと、『海ジジイ』っていう妖怪いたよ」と言う。
少し怖くなったが、そんなものいるわけないのはわかっているので、
そのままkのとなりで釣りを続けた。

しばらくすると、今度は黒塗りの乗用車が俺たちに近付いてきた。
この車は、さっきのジジイよりおかしかった。
この時間に、漁港に乗用車が来ることなんてまずない。
いや、あるとしたら、ヤンキーか走り屋くらいだろうが、
俺とkに近付いてくる車は、どうみてもその手の車にはみえない。
なによりその車は、明らかに俺たち向けて進んでくる。

「おい、やばくね?」
「なんかまずいよな」
俺とkは、ほぼ同じ不安を感じていたのだろう。

二人とも急いでリールを巻き、地面に置いていた道具を手に持ち、車から遠ざかる方向へと歩き出した。
車のスピードが少し上がったように感じた。


297 :名前:295 :04/07/07 18:26
それは錯覚ではなかった。
次の瞬間、車はすーっと加速すると、俺とk目がけて突っ込んできた。
15mほどあった距離はいっきに縮まる。

車にぶつかる寸前、kは車を避けて右側に飛んだ。
俺は船を係留するロープに足を取られ、車より一瞬速く海に落ちていた。

頭から海に落ちた俺はパニックになり、自分の横に車が落ちたことも気付かなかった。
岸からkが、「○○!○○!大丈夫か!」と叫んでくれたことで、
少しだけ落ち着き、自分の横で、
後部のボンネットだけが見えている車が、浮かんでいるのを覚えている。

その後、俺はkが投げてくれたロープで助けられ、警察を呼んだ。
俺たちに突っ込んできた車は、次の日引き上げられ、車の中からは二人の遺体が見つかった。
一人は、釣りをしていたとき俺の顔をのぞき込んできた老人だった。
もう一人は、その老人の妻だった。

しかし、この妻の死因は水死ではなかった。
妻の遺体はかなり腐敗しており、警察の話だと、死後2ヶ月はたっているとのことだった。 
つまりあの老人は、助手席に腐敗した妻の遺体を乗せて、あの岸壁から海に飛び込んだのだ。
俺とkを道連れにしようとして。

なぜあの老人は、俺とkを道連れにしようとしたのか?
死ぬつもりで海に来たのか?
何よりあの老人は、なぜあんなことをする前に笑っていたのか?

俺は今でも怖くなる。