162 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 20:12:06.98 ID:sxKuHQ7f0
それはもう、胸がきりきりとする日々だった。 常に緊張の下に晒されていた。
そんなこと、誰にも相談できなかった。

親しかった地元の友達とも、連絡を取ることが少なくなっていた。
短大で新しく出来た友人には、そんな重い話をして引かれるのが怖かった。
両親は、兄の問題にかかりきりだったし、事情を話したら連れ戻されると思い、言えなかった。

進学に当たって、「何かあったら、連れ戻すからな!」そう言われていたから余計に。




163 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 20:20:06.02 ID:sxKuHQ7f0
電話で、彼に子守唄を歌って、寝かしつけた夜。

電話を切った後、携帯をふすまに投げつけて、嗚咽して泣いたこともあった。

顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、「助けて・・・誰か・・・」そう嘆かずにはいられなかった。


だけど、私にはどうしたらいいのか、分からなかった。
孤独感に押しつぶされそうだった。


164 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 20:28:43.12 ID:z5APhhwUO
40おやじに子守唄歌ってたら精神病むわな


165 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 20:30:47.69 ID:sxKuHQ7f0
そんな中で、唯一弱音を吐けるのは、ネットだけだった。
顔も知らない相手に話を聞いてもらう時間が、安らぎになっていた。


彼は、日曜日に、彼自身が立ち上げた宗教サークルに私が来ることも強要した。

私がバイトなどを理由にして拒むと、

「夕子来ないの?じゃあ私も行かない。いいんだね?リーダーの私が行かなかったら、みんな困るけど」

そういわれて、仕方なく行っていた。


166 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 20:31:23.51 ID:sxKuHQ7f0
彼は、サークル内では、非の打ち所のない体裁の良い男へと変貌した。

堂々とした態度に、説得力のある話し方、サークルメンバーの相談にも根気良く乗っていた。

みんなが彼を慕い、信頼していた。
私は冷めた目でそれを見ていた。
彼の仮面をかぶった上面な話なんて、退屈だったしあくびもした。


167 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 20:33:38.39 ID:sxKuHQ7f0
それがサークルメンバーには気に入らなかったのだろう、
ある日、一人のおばさんから彼の元にメールがきた。

「夕子さんは、サークルに来てもやる気が見られないし、きちんと話を聞いてないですよね。
どうも幼すぎると思います。

もうちょっと態度を改めるべきじゃないかと思うので、まく吉さんから注意してもらえませんか」


168 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 20:35:06.73 ID:sxKuHQ7f0
まく吉は、「どうしよう・・・」といいながら、そのメールを私に見せてきた。

私が幼い?どっちが?

サークルに私が行かないと行けないっていうから、辛くても行ってるのに・・・

悲しいやら腹立たしいやらで、気持ちの整理がつかなかった。 


172 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 20:43:37.60 ID:z5APhhwUO
宗教組織って怖いな

お疲れ様


177 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 20:53:53.52 ID:92OPNeaP0
まんまメンヘラじゃねえかwww
しかもターゲット以外には普通に接するハイブリッドw

待てよ…それは全て演技で、実は心理学の著名人とやらとグルになって何か実験してるとか…!


178 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 20:54:05.34 ID:sxKuHQ7f0
メンヘラですね、確かこの頃は心療内科も通い始めていたと思いますが、
神の力で治癒するからなんとか~と言って、薬をまともに飲んでいませんでしたね

実験は・・・ないと思われますw


182 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:10:42.59 ID:sxKuHQ7f0
それでは続きを載せたいと思います

また重い話になりますがすみません


183 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:12:10.35 ID:sxKuHQ7f0
当時の心境を、表したような出来事があった。

住んでいたアパートは築50年の古い建物で、虫が寄り付いていたので、ある日、部屋でバルサンを炊いた。
その翌日、部屋の中央に、一匹だけ、仰向けになって死んでいる例の虫を見て、
最初はただただ不気味だった。

なぜ真ん中にぽつんと亡骸があるのかな?


184 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:12:28.42 ID:sxKuHQ7f0
よくよく考えると、そこはバルサンを置いた位置。
そのバルサンは底の部分がへこんでいて、そこだけ殺虫剤がつかなかったのだ。

例の虫は苦しみながらも殺虫剤のついてない床へとたどり着き、結局死んだのだった。

「これは私じゃないかな・・・」
そんな風に、ふと思ったりもした。


185 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:13:41.57 ID:sxKuHQ7f0
短大1年生の冬ごろ、私はとうとう彼に別れを切り出した。

後押ししてくれたのは、ネットで相談を聞いてくれたタケさんという人だった。

「その彼はおかしいよ。別れた方がいい」

再三言われて、私もなんとか今の状況から脱出したいと決意した。


187 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:19:06.97 ID:sxKuHQ7f0
まく吉は「絶対に嫌だ。私を見捨てるの?」と言った。

「私と夕子はすでに一つだからね。私は夕子だけを一生愛し続けるからね」と。

なんと言われても、私も限界に達していたので、
無理やり距離を置くことにした。
ただ自殺だけは避けたかったので、電話もメールも返さなかったけれど、拒否はしなかった。


191 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:21:58.86 ID:sxKuHQ7f0

それが、本当に不思議なんですけど、バルサンを炊くと、
例の虫って仰向けになって死ぬんですよね

死ぬと虫って仰向けになるのかな?
私は生物学はよく知らないですけど、本当に不気味でした。 


194 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:25:03.49 ID:sxKuHQ7f0
続きです

その間、私も久しぶりに学校の友人と気兼ねなく遊んだり、飲み会に参加したりした。

だけど、表面上の付き合いという感じが強くて、なかなか心を打ち解けることができなかった。

好意を寄せてくれる男の子もいたけれど、
「若い男は下心しか持ってないから近づいてはいけない」

宗教的にそう教えられていた私は、デートに誘われても、どうしても一歩踏み出すことができなかった。
まく吉とは、そういう関係は持っていなかったから。


195 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:26:25.89 ID:sxKuHQ7f0
別れて1週間ほど経った後、彼は50本のバラの花束と十数万する指輪を買って、私のアパートに訪ねてきた。

「頼むから復縁してほしい、夕子がいないとだめなんだよ。私が一生愛するのは夕子だけなんだから」
と懇願された。 
情が動いたけれど、その時は断って門前払いをした。

 
彼は、「別れても、私の気持ちは一生変わらない、一生愛し続けてるからね」と言って去っていった。 


197 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 21:27:40.23 ID:z5APhhwUO
マジでそいつ怖いわ

バラの花束とかないわー 


204 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:44:53.20 ID:sxKuHQ7f0

その後、しばらくして他の男性から告白された。

それは、ネットで知り合い、まく吉の話を聞いてもらっていた、タケさんだった。

私は悩んでいた。

友達経由で知り合った人たちとは違って、彼には私の事情を理解してもらっている。
他の男性と付き合うのが怖くなっていた私だったけれど、この人なら、と揺れていた。

そんな頃に、まく吉からの電話が鳴った。


205 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 21:46:57.11 ID:A5kG3jOg0
タケさんかよw 何か男と女って本当にどうしようもないな


206 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:49:58.43 ID:sxKuHQ7f0

なんというか、その頃の私はすでに依存症になっていたかもしれませんね

別れたのはいいものの、一人が耐えられなかったというか

情けない話です


207 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:50:45.68 ID:sxKuHQ7f0
彼は最初、自殺未遂で私を煽り、それでもなびかないのを見ると、こう言った。

「私達は、2年前、神の前で互いに一生愛し合うと誓ったよね?それを反故にするの?
それはつまり、神を裏切ることになるけど、それでもいいの?」


神を裏切る・・・すでに宗教に染まりきった私にとって、それは重罪行為に感じた。 
返事にとまどった私に、まく吉はこう続けた。

 
「夕子、正座して聞きなさい。今、神がこう仰せられています。

夕子よ、あなたは、私との誓いを破るのか。私との誓いを破ることを、私は許そう。
しかし、それによってあなたの人生が荒んだものとなるのは承知しなさい。
もう一度聞くが、あなたは私の誓いを裏切るのか?」

 
私は、その言葉に口をつぐんだ。とても重みのある言葉に感じた。

そうして、結局私は、裏切ると言うことが出来なかった。

私は、まく吉の下に戻っていった。


208 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 21:51:31.99 ID:z5APhhwUO
洗脳ぱねぇ… 


211 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 21:57:26.18 ID:sxKuHQ7f0
そうして、タケさんに電話をして、
「元彼とよりを戻すことになりました。やはり付き合えません、ごめんなさい」と伝えた。

するとタケさんは、

「そっか・・・。ごめん、辛すぎる・・・。俺・・死ぬかもしれない」と言い出したものだから、私は仰天した。


212 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 21:57:26.47 ID:fLA8v2ie0
ほんとだよ



215 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 21:59:18.32 ID:z5APhhwUO [
メンヘラ祭りww

なんで夕子の周りは死にたがりばっかなんだ


216 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:00:16.74 ID:sxKuHQ7f0
頭の中がパニックになったまま、私はとにかく「死なないで」と言い、

「とにかく会ってほしい、今一人でいたら、おかしくなりそうだ」というタケさんと会うことにした。

そうこうして、慌てて出かける準備をしている真っ只中に、まく吉から電話があり、

「今どこにいるの?」と言われたので、

パニック状態に陥っていた私は、

「今、ある男性のところへ向かっているの」とつい口を滑らせてしまった。


まく吉は発狂した。


218 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:04:38.09 ID:sxKuHQ7f0
彼は、「薬を60錠飲んだよ、助けに来て!早く!」と叫んだ。

私はますます混乱した。

まく吉の母からも、

「あんたが来ないとうちのまく吉が死んじゃう。あんたのせいよ!早く来なさい!」と言われた。


あの時のことを、世間的には修羅場と呼ぶのかな?

体が2つもない私は相当焦った。私のせいで、人が死ぬかもしれない、
そう思うと胸が痛くて倒れそうだった。


219 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 22:06:58.71 ID:A5kG3jOg0
なんかキチガイ地獄だわ


222 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:11:15.35 ID:sxKuHQ7f0 [
とりあえずまく吉には母がいるのだから、任せることにして、タケさんの元へ行った。

理由に納得はしていなかったもの、
話し合いの結果、タケさんは落ち着いた様子で、

「わかったよ、なんか来てもらっちゃってごめんね。彼氏が心配だろうから、帰りなよ」そう言ってくれた。


ちなみにまく吉は薬を吐き出して、事なきを得たようだった。
彼の母には恨み言を言われたけれど。


224 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:13:56.49 ID:sxKuHQ7f0
主体性のなさ、というのは本当に今ひしひしと感じています
自分で責任を持って行動することから、ずっと逃げてきたのかもしれませんね

まく吉のお母さんも、心療内科に通っていました



225 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:21:28.85 ID:sxKuHQ7f0
そうして、再び付き合うようになってから、知ったこと。

彼はサークル内の女性とまたも親密な関係になっていた。

その女性(ユミさんとする)に頼まれて、
ユミさんの部屋に行って一晩泊まったと聞いたり、彼女が手を握ってきた、など。

彼の話はいつも、「相手の女性が誘ってきた」という口ぶりだった。

当時の私は、それでも彼を信じていたので空恐ろしい。

ただ、性的な面では、彼は潔癖だったので安心していた。


226 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:23:26.83 ID:sxKuHQ7f0
そんな風にして日々が過ぎ、私も相当心を蝕まれていた。自分では、ほとんど自覚はなかったけれど。

気づけば、また季節は巡り、卒業まで半年の時期になっていた。
私は、そんなまく吉の束縛に対しても、ずいぶん慣れてしまっていた。

異常という感覚が麻痺していたのだろう。


228 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 22:23:31.35 ID:A5kG3jOg0
彼はインポなんじゃないの?


229 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:26:24.24 ID:sxKuHQ7f0

いわゆるそれに近い状態だったみたいです
更に、薬物投与の関係で、まったくだったみたいです



231 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:32:08.96 ID:sxKuHQ7f0
友達に、ぽろっと、「彼が病んでいるんだ・・・」と伝えたことはあったけれど、
精神病自体があまり知られてなかったので、特に反対されたり意見を言われることはなかった。

何より、自分が、幸せだと信じたかったのかもしれない。


ある日、宗教サークルからの帰ると、まく吉から電話があった。
「今日、帰り道に、何考えてた?」

私は、これからの将来どうなるのかな・・・という思いに耽っていたところだった。


232 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:33:37.10 ID:sxKuHQ7f0
「将来のことを考えていたよ。
卒業後、心理学の専門学校に行くって言ってたけど、貯金はまだ貯まってないし、
とりあえず実家に戻ってアルバイトでもしようかなって」

私が行こうと思っていた専門学校は海外の学校だったため、9月から新学期が始まる予定だった。


「そうか、将来のことを考えていたんだね。結婚のことは考えなかった?」

「うーん・・、まく吉の年齢を考えたら、先に結婚してから専門学校に行く準備をしたほうがいいかな・・・
とも思ったよ」


233 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:36:07.08 ID:sxKuHQ7f0
「・・・やっぱりそうか・・・」

まく吉は意味深な雰囲気で間を取ると、こう言った。

「実は今日、私達は卒業後結婚すべきだってお告げが来たんだ。
夕子にも同じ思いが与えられたみたいだね」
「え、そうなのかな?でも、そんなことあるのかな?」

「これは間違いなく啓示だよ。私には分かる。夕子、結婚のこと考えてみてほしい」


私はその時、まく吉の言葉を完全に信じていた。 もうこれが運命なのかな、と感じていた。

今、どん底にいるけれど、これ以上のどん底はないだろう。
あとは、良くなるだけ・・・そんな期待を抱くようになっていた。 


235 : 夕子 ◆UL6c7.AL3TJI:2011/11/19(土) 22:50:17.58 ID:sxKuHQ7f0
そうして後日プロポーズをされ、私は承諾した。

それまで進学のために貯めていた100万程のお金は、ささやかな結婚の費用に当てることに決まった。

まく吉が会社にあまり行けていないことは、両親も知っていたが、
そこまで酷い状態だとは思っていなかったのだろう。

 
再度、挨拶に来た時、まく吉はパリっとスーツを着こなしていた。
借金のことは隠して、会社に行けていた頃の年収を提示して、大丈夫だと安心させた。

結果、4年近くにわたる交際の末の結婚ということで、許しがでた。


236 : 名も無き被検体774号+:2011/11/19(土) 22:54:26.53 ID:A5kG3jOg0
うう・・夕子ちゃん・・・(´;ω;`)


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