679 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 02:25:17 ID:BiI+Rh5RO
10分程してから警察が来た。
警察には父が事情を説明していた。
俺は母親と居間にいたが、少ししてから警官が居間に来て、あの夜の事を聞いてきた。
ハッピーとタッチの事、木に釘で刺された少女の写真の事、
淳の名前が秘密基地に彫られていたこと・・・

その後、放課後に出会った事など、『中年女』に係わる全ての事を話した。
そして、さっきの出来事も。

鑑識らしき人も来ていて、俺が話している間に窓の指紋を採取していた。
俺が話した内容で、警官がもっとも詳しく聞いてきたことが、少女の写真の事だった。
その少女の容姿や面識の有無等聞かれたが、それについては『よく分からない』と答えるしかなかった。
そして裏山の地図を書かされ、
翌日、警察が調べに行くと言う事になり、自宅周辺の夜間パトロール強化を約束して、
警察官は帰っていった。

結局、指紋は出なかった。

しばらくして、慎と淳の親から電話がかかってきた。
親同士で何やら話していたが、
『中年女』に関する話というより、学校にどのように説明するかを話していたようだ。





686 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 02:56:49 ID:BiI+Rh5RO
その夜、俺は何年かぶりに両親と共に寝た。
恥ずかしさなど微塵も無く、純粋に『中年女』が怖く、なかなか寝付け無かった。


次の日の朝、母親に起こされた時には、すでに午前8時を回っていた。
『遅刻する!』と慌てると、母が『今日は家で寝てなさい』と言う。
どうやら既に学校に事情を話したらしい。
父はすでに出社していたが、母はパートを休んでいた。

慎や淳も今日は学校を休んでいるだろう・・・と思ったが、あえて電話はしなかった。
慎は恐らく、厳格な両親に怒られている。
淳の両親は、不登校になった淳の真実を知りショックを受けている。と思うと、電話するのが恐かったから。

俺は自室に篭り、『中年女』が早く警察に捕まることだけを願っていた。
一時も早く、追い詰められる恐怖から解放されたかった。

母親は何故か、『中年女』の事を口にしてこなかった。
俺への気配り?と思い、俺も何も言わなかった。

昼飯を食べ、ふたたび自室に篭っていると、ドスっと家の外壁に鈍い音が響いた。
俺はとっさに、慎だ!と思った。
あいつは俺を呼び出す時、玄関の呼鈴を鳴らさず、窓に小石を投げてくる事がしばしばあったからだ。



688 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 03:14:45 ID:BiI+Rh5RO
俺は窓から外を眺めた。
家の前の路地にある電柱に慎がいるはず!と思ったが、慎の姿は無かった。
どこかに隠れているのかと思い、見える範囲で捜したが何処にもいない。

その時、俺の部屋の下にあたる庭先から、『キャ!』と母親の声がした。
びっくりして窓を開け、身を乗り出して下を見た。
そこには母親が、地面を見つめながら口元に手を当てがい、何かを見て驚いていた。

俺は何が起こっているのか分からず、『どーしたの!』と聞いた。
母は俺の声にギクッと反応し、こちらを見上げ、驚いた表情で無言のまま家の外壁を指差した。
俺は良からぬ感じを察したが、母の指差す方向を見た。
そこには何やら、ドロっとした紫色した液体と、ゼリー状の物が付いていた。
先程のドスっの音の正体であろう。
視線を母の足元に落とし、その何かを捜した。

そこには、内蔵が飛び出た大きな牛蛙の死体が落ちていた。
母はしばらく呆然と立ち尽くしていた。

俺はすぐに『中年女』が頭に浮かんだ。
すぐに目で『中年女』の姿を捜したが、何処にも姿は見えなかった。
母はふと思い出したように居間に駆け込み、警察に電話をした。



690 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 04:34:37 ID:BiI+Rh5RO
母は青い顔をしていた。
恐らくこの時始めて、『中年女』の異常性を知ったのだろう。
そうだ、あの女は異常なんだ。
きっと今も蛙を投げ込んできた後、俺や母の驚く姿を見てニヤついているはず・・・
きっと近くから俺を見ているはず・・・
鳥肌が立った。


警察早く来てくれ!心の中で叫んだ。
もうこの家は家では無い。
『中年女』からすれば鳥籠のように、俺達の動きが丸見えなんだ。
常に見られているんだと感じ出した。


しばらくしてパトカーがやってきた。
昨日とは違う警官二人だった。
警官一人は、外壁や投げ込んで来たであろう道路を何やら調べ、
もう一人は俺と母に、『何か見なかったか?』『その時の状況は?』などなど、
漠然とした事を何度も聞いて来た。

最後に警官が、不安を煽るような事を言って来た。
『たしか、昨日もいやがらせを受けているんですよね?
おそらく犯人は、すぐにでも同じような事をしてくる可能性が高いです』と。

俺はたまらず、
『あの呪いの女なんです!コートを着てる40歳ぐらいの女なんです!早く捕まえてください!』
と半泣きになって懇願した。



774 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:31:16 ID:UOWDTjZwO
すると警察官は、
『さっきね、山を見てきたんだよ・・・
犬の死体も、板に彫られたお友達の名前も、あと女の子の写真もあったよ。
今からそれを調べて、必ず犯人捕まえるから!』と言い、俺の肩をポンと叩くと、
母の元へ行き何やら話していた。
『主人に連絡を・・・』みたいな事を言われていたようだ。
壁に付いた蛙の染み、及びその死体の写真を撮り、1時間程で警官達は帰って行った。


しばらくして父親が帰宅した。
まだ5時前だった。昨日の今日だから心配になったのだろう。
夕食の準備をしている母も、夕刊を読んでいる父も無言だったが、
どことなくソワソワしているのが分かった。
もちろん俺自身も、次にいつ『中年女』が来るのか不安で仕方なかった。

その日の晩飯は家族皆が無口で、只テレビの音だけが部屋に響いていた。

そして夜11時過ぎ、皆で床に就いた。
用心の為、一階の居間は電気を点けっぱなしにしておくことになった。



775 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:40:45 ID:UOWDTjZwO
その夜も家族揃って同じ部屋で寝た。
もちろんなかなか寝付けなかった。
どれぐらい時間が過ぎただろう。
突然玄関先で、『オラァー!!』とドスの効いた男の声とともに、
『ア゛ー!ア゛ー!』と聞き覚えのある奇声、『中年女』の叫び声が聞こえた。

俺達家族は皆飛び起き、父が慌てて玄関先に向かった。
俺は母にギュッと抱き締められ、二人して寝室にいた。
カチャカチャ・・・ガラガラガラガラ!
父が玄関の鍵を開け、戸を開ける音がした。



782 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:55:14 ID:UOWDTjZwO
戸を開ける音と共に、
『ア゛ー!!チキショー!ア゛ァー!!ア゛ァァァァ!』
再び『中年女』の叫びが聞こえて来た。
『大人しくしろ!』『オラ!暴れるな!』と、男の声もした。
この時、俺は『警官だ!警官に捕まったんだ!』と事態を把握した。


中年女は奇声を上げ続けていた。
俺はガクガク震え、母の腕の中から抜けれなかったが、父親が戻って来て、
『犯人が捕まったんだ。お前が山で見た人かどうかを確認したいそうだが・・・大丈夫か?』
と 尋ねてきた。
もちろん大丈夫ではなかったが、これで本当に全てが終わる。
終わらせることが出来る!と自分に言い聞かせ、『・・・うん』と返事し、
階段をゆっくりと降り、玄関先に向かった。


玄関先から、
『オマエーっ!チクショー!オマエまで私を苦しめるのかー!』と、凄い叫び声が聞こえ、
足がすくんだが、父が俺の肩を抱き、
二人の警官に取り押さえられた『中年女』の前に俺は立った。



791 :ハッピー・タッチ 』◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:10:12 ID:UOWDTjZwO
俺は最初、恐怖の余り、自分の足元しか見れなかったが、父に肩を軽く叩かれ、
ゆっくりと視線を『中年女』に送った。

両肩を二人の警官に固められ、地面に顎を擦りつけながら、『中年女』は俺を睨んでいた。
相当暴れたらしく、髪は乱れ、目は血走り、野犬の様によだれを垂れていた。

『オマエー!オマエー!どこまで私を苦しめるー!』

訳のわからない事を『中年女』は叫び、ジタバタしていた。
それを取り押さえていた警官が、『間違いない?山にいたのはコイツだね?』と聞いてきた。
俺は中年女の迫力に押され、声を出すことが出来ず、無言で頷いた。

警官はすぐに手錠をはめ、『貴様!放火未遂現行犯だ!』と言った。

手錠をはめられた後も、ずっと奇声を発し暴れていたが、
警官が二人掛かりでパトカーに連行した。
そして一人だけ警官がこちらに戻って来て、『事情を説明します』と話し出した。



関連記事





危険な好奇心 6
危険な好奇心 7
危険な好奇心 8
危険な好奇心 9
危険な好奇心 10
危険な好奇心 11
危険な好奇心 12
危険な好奇心 13