【閲覧注意】
この事件の取り調べ中に、実は1984年にも当時の関根の周辺で少なくとも3人の男女が失踪した事が判明している。
犯行発覚のきっかけになったのは、関根の知人で「アフリカケンネル」へのマスコミ対応で疑惑を否定し続けた元自衛官の証言だった。


【1984年の事件】
(「アフリカケンネル」はまだ存在せず)
・当時の関根の兄貴分としてふるまっていた暴力団員の失踪
関根が資産家である風間家の娘(博子)と結婚する際に協力し、報酬を支払う予定だったが、実際には支払わずにトラブルになっていた。
周囲に「近く、でかい金が動く」と話していたが、自宅に迎えに来た車に乗って出かけたまま行方がわからなくなった。(2月)

偶然にも山崎とこの暴力団員は知人だった

トラック運転手をしていた男性の失踪
男性は以前関根が経営していたペットショップで働いており、関根は店の看板を男性の名義で発注。
男性は看板の代金を立て替え、返済を要求していたことが判っている。
近所のガソリンスタンドで関根から電話を受け、返済を約束されたと出かけたまま、行方不明となった。(5月)

スナックを経営していた女性の失踪
元自衛官の妻で、夫婦間で金銭トラブルがあったことが判明している。
元自衛官は夫婦喧嘩の際に妻を死なせてしまったため、関根に遺体の処理を依頼したと供述。(6月)

この元自衛官は、後に失踪した暴力団員と妻の遺体の死体損壊・遺棄に関与を認め、関根が解体した遺体を自分が川に遺棄したことを証言した。
(トラック運転手の失踪事件の関与は否定)

証言に基づき川の捜索が行われたが、歳月の経過とともに問題の川は橋の取り壊し事業等が行われており捜索は難航する。
当時の遺体の解体・焼却現場となった旧犬舎も捜索したものの、物証は乏しく立件できず。
未解決のままとなった。

関根もこの事件への関与は認めている。
妻のバラバラになった遺体を遺棄した元自衛官は、暴力団員の遺体の焼却も行ったと証言した。

同じような金銭トラブルを起こしていたにも関わらずこの暴力団員の殺害が発覚しなかった事から、川崎昭男氏の殺害に踏みきったと公判ではみており、殺人が殺人を呼ぶ連鎖ともいうべき現象が起きていたことがわかる。
事件の立証はできなくとも、失踪事件への関根らの関与は確定とみられている。

⁂未解決でありながら、関根の関与が疑われる失踪事件は他にも多数
だが状況証拠や疑惑だけでは関与の断定はできず、「埼玉県愛犬家殺人事件」の他に比較的関与がはっきりしているのが上記の3件のみである。



【事件に関する時系列】
非常にややこしく複雑な背景が入り乱れる。そのため、わかりやすく時系列に事柄を並べてみた。
・1993年 
4月 
 川崎昭男氏失踪事件
7月
 稲川系暴力団幹部・遠藤安亘及び和久井奨失踪事件
8月 
 滝口良枝さん失踪事件

・1994年 

1月 
 大阪愛犬家殺人事件発覚 マスコミが大々的に報道
 埼玉県でも同じように愛犬家が連続失踪していると噂が広がり始める
2月 
 マスコミが「アフリカケンネル」に取材開始 一気に事件が表面化
 川崎氏遺族らが事件性を訴え、関根は潔白を主張したが当初から疑いは濃厚とされた
 (但し、証拠は全く発見されず)
 群馬県在住の元自衛官が「アフリカケンネル」の取材を一手に取り仕切る
9月 
 埼玉県警が元自衛官を詐欺容疑で逮捕 山崎の関与が判明
10月 
 山崎永幸の事情聴取へ
 山崎は事件への関与を否定 その後逃亡
11月 
 一緒に逃亡した山崎の妻(当時)を逮捕
12月 
 山崎の出頭 事件の証言開始
 川崎昭男氏の遺品・遺骨の発見 

・1995年 
1~2月 
 関根元・風間博子・山崎永幸の逮捕及び被害者ら4人の遺品・遺骨が次々と発見される

⁂捜索範囲は山林や河川など広範囲に及んだが、骨片は高温で焼却されていたためDNA鑑定が難しかった。だが、義歯など数ミリ~数センチの遺品を探す懸命の捜査が実を結ぶ。
捜査員らは川底などを篩(ふるい)にかけて遺品を探した。


4月 
 関根らの起訴
 関根元・・・川崎昭男・遠藤安亘・和久井奨・滝口良枝ら4人の殺人罪・死体損壊・遺棄罪
 風間博子・・・川崎昭男・遠藤安亘・和久井奨ら3人の殺人罪・死体損壊・遺棄罪
 山崎永幸・・・川崎昭男・遠藤安亘・和久井奨・滝口良枝ら4人の死体損壊・遺棄罪
4~5月
 関根の供述により1984年の失踪事件の再捜査 物証の発見ならず
7月 
 関根・風間・山崎の初公判開始
 関根・・・罪状否認保留 弁護人は検察側の批判にまわる
 風間・・・川崎氏の車の移動は認めるが、事情は知らなかったとして事件の起訴事実の全面否認
      遠藤安亘・和久井奨の死体遺棄は認めるも、殺人・遺体解体は否認
 山崎・・・起訴事実を大筋で認める

10月
 約束が違うとして山崎が証言拒否を宣言


⁂山崎の主張・・・「証拠を出せばすぐに釈放」の密約が反故にされた。詐欺容疑で拘留中だった後妻の釈放、面会、検察庁内で情交の場を提供された。
検察の主張・・・密約はなかった。妻の釈放は山崎の要求によるものではなく、正当な手続きを経て行われたものであり、検察庁内で情交などありえない
(ただし、翌年の1996年には妻との面会を許可した事を認めている)


この問題について、関根と風間の弁護人は検察の立証の柱となっている「山崎供述」は検察側によって誘導された信憑性の薄いものであり「自供すれば殺人を不問に付す」という司法取引は信用に価しないものと主張
関根元の主張・関根の弁護側の主張、風間の主張・風間の弁護側の主張、山崎の証言・山崎の弁護側の主張はそれぞれ全く異なるものとなり、公判は波乱を帯びた混乱の場となる。
11月
 関根・風間の公判に山崎が証人として初出廷するも、証言拒否
 その後も検察・警察批判、裁判官に罵声を浴びせるなど問題行動を続ける

⁂山崎の弁護側は、山崎には逃げ場がなく仕方なく犯行を手伝ったとして無罪を主張していた。
だが、山崎本人は公判トラブルが起きるまで起訴事実を全面で認めている


12月
 山崎に懲役3年の実刑判決 山崎側は控訴

⁂山崎の隷属的な立場は認めるものの、暴力・監視などは受けていなかったと認定。
役割の重要性、結果の重大性は大きく、例え脅されていたにしろ、自らの意志で犯行に加わったことが決め手となった。

・1996年
 東京高裁にて山崎の控訴棄却 上告せず刑の確定へ

・1998年
 山崎永幸満期出所
 
ここに至り初めて関根が起訴事実を認めたものの、主犯は風間であり、実際の殺人は山崎が行ったと強く主張妻である風間を守るために仕方なく犯行に加わったとした
が、これ以降元夫婦間の対立が決定的なものとなってゆく

・2000年
 
105回の公判 ようやく結審に至る
 関根元及び風間博子に死刑求刑 風間の無罪(冤罪論)が浮上
 (犯行関与の可能性は高いものの、殺害・死体損壊の証拠は関根・山崎の証言のみ
 
・2001年
 関根元及び風間博子の死刑確定 両名とも控訴
 
実は供述書は関根・風間・山崎ともに内容がそれぞれ異なっており、対立・矛盾する部分も多い。
しかし、関根・風間の供述では、遠藤安亘を除く3人を山崎が絞殺したとの点が一致している。
「山崎供述」はあくまで山崎の都合の良いように供述されたものであり、もっと早い段階で山崎も犯行に加担していたという点でもほぼ一致しているものの、被害者らと山崎を結ぶ利害関係が見つからなかった
仮に山崎が殺害を請け負ったとしても、金銭などの報酬のやり取りの形跡もない。
そのため、最も信用できるのはやはり「山崎供述」によるものと判断された。

⁂実際に山崎の証言が最も具体的で、不自然・不整合な部分もほとんどなかったという。
犯人しか知りえない情報も多く、全体的に信用できるとされたが、同時にある程度の虚偽や誇張が一部含まれている可能性も指摘されている事も記載しておく。


この時点でもまだ、関根は風間が主犯であると強く主張していた。


・2003年
 関根・風間両名の控訴審開始
 
再び山崎が証人出廷したが、検察や弁護人への批判、裁判制度への疑問を呈しつつ、曖昧な証言に徹する。
唯一の証言らしきものが風間の無罪主張だったが、具体的な物証に基づく根拠はあげていない。

・2005年 
 風間が遠藤安亘・和久井奨の死体損壊について、初めて一部関与を認める
 東京高裁にて両名の控訴棄却 両名とも上告

・2009年 
 最高裁が上告棄却 両名とも死刑が確定

・2016年
 関根元が心臓発作で倒れ、治療開始 入院

・2017年
 関根元 病死

・2018年 
 東京拘置所にて現在も風間博子収監 死刑を待つ


正直なところ、この一連の事件の解明されていない部分が大きすぎて全容は理解しかねる。
唯一の生き残りの風間博子は戦後12人目の女性死刑囚にあたるが、多くを語ろうとしていない。
「アフリカケンネル」は廃業となったものの、残された犬たちの世話は風間の実家が支援していたという。

様々な後味の悪さをまき散らしたこの事件の主犯である関根は、拘置所内でも多くのトラブルを起こしていたらしい。
事件発覚当時のワイドショーや週刊誌などの記事を覚えておられる方も多いだろう。

事件の詳細は、志摩永幸(山崎永幸)の「愛犬家殺人事件」に詳しく記載されている。
(この暴露本はゴーストライターの可能性が高いとの指摘あり)
また園子温監督がこの事件を題材に映画を製作しており、他にもこの事件を扱った作品も多い。

殺害した遺体を損壊、バラバラに細かく解体して証拠を隠滅するという点では「北九州連続監禁殺人事件」に通じるものがあり、犯人でありながら自らマスコミに露出する姿は江東マンション神隠し殺人事件の犯人に通じるものがあるのかもしれない。(遺体を細かく切断処理すると言う点では3件とも一致)

この現代においても未解決事件は多数あり、同時に行方不明者の数は数万人を超える。
案外、こういった闇の世界は身近にも潜んでいるのかもしれない。


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