怖い話

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名無しさん:2011/01/23(日) 22:57:05 ID:LTJ7ahc60

本スレは規制で書き込めないのでこちらに投稿させてください。
実際に幽霊とかこの世のものじゃない何かを見たってわけじゃあないんだけど、
俺にとっては洒落にならないくらいのトラウマ体験なので。

もう三十年近く経つんだけど、父方の爺ちゃんの法事に行った時の話。
俺が2歳くらいの時に爺ちゃんは死んじゃった
(父親が40越えてから俺が生まれたから爺ちゃんもかなり年行ってたんよ)
からもちろん顔なんて知らないんだけど、
命日以外にもお盆とかに帰省してたから田舎の風景は結構覚えてる。
(一番古いので3歳の時の記憶かな。さすがに鮮明じゃないけど)

うちは貧乏だったから車なんか持ってなくてさ、
長時間電車に揺られて(しかも鈍行で)の帰省だったから強く印象に残ってるんだろうな。

古い記憶だから多少の誇張はあるかもしれないが、父方の実家はとにかく田舎だった。
駅からバスに揺られて数十分。
見渡す限りの田んぼや畑。
さすがに家は茅葺じゃなかった(と思う)けど、
広い庭に離れと風呂(大人だと湯船に一人しか入れないくらい狭かったw)があって。
親戚一同三十人以上が普通に入れる居間とか、やたら暗くて長い廊下だとか。
結構立派な天井裏とかもあった。

これと言ってホラーな物(コトリバコとか)は置いてなかったと思うけど、
親戚の子供達で良くかくれんぼとかしてたっけね。
古き良き農村ってこともあるかもしれないが、とにかく「これぞ田舎」って感じの広い家だった。

そんな家の近くの田んぼでは蛍が沢山飛んでて、もちろん星もきれいでね。
街灯も少なくて夜は真っ暗だったからすごく怖かった印象があるけど、
横浜では見ることができない自然の風景は本当に幻想的だったと思う。


1139名無しさん:2011/01/23(日) 22:59:44 ID:LTJ7ahc60

続きです。適宜改行入れた方がいいみたいですね…。

で、幼稚園の夏休みに入ってすぐに爺ちゃんの家に来たわけです。
法事の何日か前に俺と母ちゃんと姉ちゃん達で先に帰省したんだ。
父親は仕事の関係上、法事当日に来ることになってて。

まあ、田舎に来たところでファミコンもまだメジャーじゃなかった様な時代ですから、
家に居たって子供はやることなくてね。
同じように先に帰省してきてた親戚の従兄弟やら近所の子供達と毎日外で遊んでた。

ベーゴマ、おはじき、かくれんぼ。
六虫、メンコに花一匁。
昭和の古き良き遊びのほとんどをやってたと言っても過言じゃないかな。

特に好きだったのはほおずき笛。
親戚のおばさんにほおずき笛のやり方を教えてもらったんだけど全然音が鳴らなくて。
庭の花壇に沢山実ってたし、
何より他の子供たちが出来てたのが悔しくてずっと練習してた。
中身の抜き方が甘くてやたら苦い汁が口の中に広がったり、袋が破けて音が鳴らなかったり。
そんな過程を踏みつつも音が鳴った時の嬉しさというか達成感はすごかった。

やたら前置きが長くなってごめん。
こっからがトラウマ体験。

そんな感じで法事までの数日間を過ごしてたんだけど、
ある時従兄のやす君(当時十歳)が
すごく面白いところがあるからみんなで行こうって誘ってきたんだ。
近くの山(丘の上の林っぽい感じのところ)に寂れた神社があるらしいと近所の子供に聞いたそうだ。
要は肝試しに誘われたわけ。

俺は生まれながらのビビりだもんで断りました。
当時子供でしたからお化けの存在をもろに信じてましたし。
「そんなんで怖がってたら男じゃねえ」
みたいなこと言われたけど怖いものは怖いわけで。
でも、男は強くなきゃだめだみたいな葛藤もあって悩んでたんですが、
そんな僕らのやり取りを耳にした婆ちゃんが急に怒り出したんだ。

「あそこは行っちゃいかん!オガメ様(って聞こえた)の祟りがあるぞ!!!」

普段温厚な婆ちゃんの突然の怒声にやんちゃで通ってるやす君も黙ってしまって。
とにかく近寄ってはいけないみたいなことを言いながら
婆ちゃんは去って行きました。


1140名無しさん:2011/01/23(日) 23:00:55 ID:LTJ7ahc60

ちょっと乗り気だった俺の姉ちゃん達も
婆ちゃんの剣幕に圧されて行く気を無くし、いつも通りゴム飛びを始めてた。
だけど、やす君はそれでも諦めきれなかった様子で「おい、行くぞ」と囁きながら
俺の手を引っ張り始めた。
お化けがいたら怖い、いやだ、と泣きべそで言った俺に対して
「黙ってりゃわかんないから。そんなんで怖がってたら男じゃねえ。弱虫って言いふらすぞ」と
半ば拉致に近い感じで俺は連れてかれた。

昼間とはいえ、舗装された道が無い林の中。
お化けは夜に出るって言う暗黙の了解があったとしても、
生活音が全くしない田舎のけもの道は俺にとっては異界への入り口みたいに思えた。
泣きべそを掻く俺を尻目にやす君はどんどん進んでいく。
取り残されてしまう恐怖の方が強くて一生懸命後をついてった。

しばらく進むと林の中に大半が土に埋もれ苔むした石段の様な物が見えた。
そしてその奥には色あせて朽ちかけた小さい鳥居があった。

俺はやす君の腕に必死にすがりながら一段一段石段を登っていく。
鳥居をくぐると少し整地された(もちろん草も木も生い茂ってたけど)場所があり、
所々石が欠けた狛犬と今にも崩れそうなお社がさみしげに佇んでいた。


1141名無しさん:2011/01/23(日) 23:02:21 ID:LTJ7ahc60

お社はすごく小さくて、街中にあるお稲荷さんみたいに小さい感じのもの。
狛犬は自分が知っているものじゃなくて、
どちらかというとお稲荷さんのようにすごくやせた感じのものだった。
(お稲荷さん特有の赤い前掛けは無かったから詳細は不明)

やす君は怯える俺を置いてお社の方へ歩いて行った。
そして、お社の中を覗き込む。
婆ちゃんのあの怒声と、林の中の神社、そして不気味な狛犬。
言い知れぬ恐怖で俺はその場から動けずに震えてた。

しばらくするとやす君が戻ってきて
「おい、面白いのがあるぞ」と俺の手を掴み、無理やりお社の前に来させた。
朽ちかけているとはいえ、立派な造りをした社。
その格子戸の中をのぞいてみろとやす君は俺を持ち上げた。
格子戸の中には黒とも茶色とも言えない色の物体があった。

拳大の動物の頭骨らしきものが。

実際に動物の骨を見たことはなかったけど、
幼稚園に入る前から動物図鑑や恐竜図鑑を眺めるのが好きだった俺は、
小さくとも牙のある黒い物体が動物の骨であることはすぐに理解できた。
と言うよりも、見てはいけないもの――怪異的な物体を見てしまったような気がしてならなかったんだろうね。

「うわあぁああああぁ!!」

あまりの恐怖でパニックになった俺はやす君の手を振りほどいてその場から逃げ出した。
後ろからやす君が俺を名前を呼びながら走ってくる。
だけど、恐怖の臨界を突破してた俺は
やす君の制止の声も聞かずそのまま一目散に林を抜けて家まで戻った。
多少なりともけもの道みたいになっていたとは言え、自分でも驚くほどの帰巣本能だったなと思う。


1142名無しさん:2011/01/23(日) 23:03:27 ID:LTJ7ahc60

泣きながら家に帰って来た俺に親戚一同が何事かと出てきた。
といっても恐怖でパニくってた俺じゃとてもうまく伝えられなくて、みんな要領を得ない感じ。

しばらくしてやす君が戻ってきて事情を話してくれた。
裏山の神社行ったこと。
中を覗き込んだ途端に俺が逃げ出したこと。
それまで俺のことを心配して慰めてくれてた婆ちゃんは、
その話を聞いた刹那すごい形相になり、やす君の顔をひっぱたいた。

「あそこには行っちゃなんねえと言っただろう!この罰あたりが!!」

今思えば後にも先にもあんな顔をした婆ちゃんは見たことがなかった。
婆ちゃんはひとしきり怒鳴った後、
「鬼灯摘んで来い!風呂の水あたらしく入れ替えろ!」と叔母さん達に指示し始めた。
俺とやす君は鬼の形相の婆ちゃんに素っ裸にされ、叔母さん達に縁台に押さえつけられた。
婆ちゃんはお経みたいのを唱えながら叔母さんが摘んできたほおずきの実を俺達の口に詰め込む。

「噛め!噛んで飲み込め!オガメ様に喰われるぞ!」

そう言って咀嚼を促す。口の中にあの嫌な苦みが広がる。
飲み込んでは口に詰め込まれ、吐き出しそうになるのを無理やり手で塞がれた。
俺とやす君は泣き叫びながら抵抗するが、婆ちゃんの必死の形相に抵抗の余地はなかった。


1143名無しさん:2011/01/23(日) 23:04:21 ID:LTJ7ahc60

それが終わると無理やり水を飲まされ、口の中に手を突っ込む。

「吐け!全部吐け!!悪いの全部吐け!!!」

大量に吐き出される鬼灯。
何度も水を飲まされ、胃液が出るまで吐かされた。
涙と鼻水と嘔吐物でぐしゃぐしゃになった俺らを今度は水風呂に放り込む。
頭の先まで風呂に沈められ、それは何度も繰り返された。

「謝れ!謝らんと祟られるぞ!!!謝れ!」

どれくらい時間が経ったかわからない。
婆ちゃんはお経を唱えながら風呂の入り口から山の方を見つめていた。
それを見ながら恐怖と嗚咽で声にならない声で俺達はずっとごめんなさいと唱え続けてた。

風呂から出され、服を着させられた俺達は
居間の神棚の前で婆ちゃんにオガメ様についての話を聞かされた。
(さすがにうろ覚えだけど)

今では廃れてしまったけど、この地方では無病息災を願ってオガメ様を祀ってたらしい。
(あの骨みたいなのが御神体らしい)
あの神社はその名残で、婆ちゃんの世代の人は
お盆やお彼岸の時期に訪れてお供え物をしているそうだ。
(だからけもの道があったのかもしれない)
オガメ様のお社を荒らすと、オガメ様に祟られて不幸な死に方をするということ。
そして、この土地の守り神が住む場所だから、子供たちが気軽に遊んではいけないということ。
そんなことを俺らの目をまっすぐ見ながら話してくれた。


1144名無しさん:2011/01/23(日) 23:06:33 ID:LTJ7ahc60

それから数年後、婆ちゃんも亡くなって
本家の方でもあの家を引き払ってしまったから、
あの辺りが今どんな風になっているかはさっぱりわからない。
最近親戚で集まる機会があったんだけど、オガメ様についての詳しい話は誰も知らなかった。

現代の日本で祟りとか呪いとかそんなに信憑性はないと思う。
俺も実際に幽霊を見たことが無いから手放しで信じるわけもない。
だけど、こういう土着信仰は日本各地にあるし、それにまつわる怪談も良く耳にする。
だから、婆ちゃんの言ってたことが絶対に嘘とも言い切れないんだよね。

ただ、オガメ様が何者かわからない
(狛犬がお稲荷さんぽかったけどお稲荷さんだったらお稲荷さんって言うと思う)し、
ほおずきを食わされたことに意味があるのかも分からない。

おそらくだけど、子供達にそういう目に見えないものへの畏怖とかを刷り込ませる為の
婆ちゃんの狂言だったんじゃないかな、とも思ったりする。
悪いことをしたら罰が当たる、ってのを身をもって体感させられたというか。

あの苦い鬼灯を無理やり食べさせられて吐かされて、水責め。
さすがのやす君もあの一件以来すごくまじめな子になったし、
俺も神罰が下るような愚かな行為はやってない。
(むしろ怖くてできないわ)

一応、現在まで無事に生きてこれているので
オガメ様に祟り殺されたりはしてないのは確実だけど、
少なくとも鬼灯を見るたびに今でもあの日の出来事が頭をよぎります。
あと、今でも泳げないのはあの日の水風呂の恐怖があるからじゃないかとも思っていますw

というわけで思い出せる範囲で書いた俺にとって死ぬほど洒落にならない怖い話でした。
長文失礼。